網膜静脈閉塞症

網膜静脈閉塞症には、2つの種類があります。ひとつは網膜内の静脈が閉塞する「網膜静脈分枝閉塞症」で、もうひとつは視神経内の静脈が閉塞する「網膜中心静脈閉塞症」です。

・網膜内の静脈が閉塞するタイプ
→網膜静脈分枝閉塞症(BRVO:Branch Retinal Vein Occlusion)
・視神経内の静脈が閉塞するタイプ
→網膜中心静脈閉塞症(CRVO:Central Retinal Vein Occlusion)

網膜静脈分枝閉塞症とは?

網膜内の網膜静脈に血栓ができると血管が閉塞して血流が悪くなり、血液や水分が血管の外に溢れ出して、眼底出血や網膜浮腫が起こります。眼底出血や網膜浮腫が黄斑におよぶと(黄斑浮腫)、視力低下や、視野欠損、ものがゆがんで見えるなどの症状が現れます。
静脈の閉塞した場所によって、自覚症状は無症状から重い視力障害までさまざまですが、糖尿病網膜症と並んで、眼底出血を起こす代表的な病気のひとつです。

網膜静脈分枝閉塞症の原因

網膜静脈分枝閉塞症は、年齢が高い方に多く見られ、加齢が主な原因と言われており、高血圧や糖尿病、高脂血症の人ほど起こる率が高いのが特徴です。実際に静脈閉塞が起きた人の約8割が、高血圧のある人です。高血圧や糖尿病、高脂血症が原因で網膜内に動脈硬化が起こり、接している静脈を圧迫することで、静脈が閉塞して血液の流れがせき止められます。血流が悪くなると、静脈内の圧力が高くなり、血管から網膜に水分や血液が溢れ出し、網膜浮腫や眼底出血を起こします。
網膜内に出血が溢れ出すと、血液によって光が遮られ多部分が見えにくくなります。また網膜浮腫が黄斑に及ぶと、物が歪んで見えたり、見たい部分が見えなくなる視野欠損などの症状が現れます。

網膜静脈分枝閉塞症の主な症状

網膜静脈分枝閉塞症は、血管の詰まる部分によっても症状は違ってきます。一般的に症状の現れ方はゆっくりで、全く自覚症状がない方もいれば、視力低下や視野欠損などの症状が現れる方もいます。血管が詰まると、血液の流れが悪くなり、静脈から血液や水分が溢れ出します。溢れ出した血液は、網膜に広がって眼底出血を起こしたり、網膜内に閉じ込められて黄斑浮腫を引き起こします。眼底出血を起こすと、出血が広がっている部分の視野が遮られ、部分的に見えづらいといった症状が現れます。また、角膜浮腫が起こると視力の低下が自覚症状として現れます。特に黄斑部分に出血や浮腫が起こると、極端に視力が低下します。

網膜静脈中心閉塞症とは?

細かく枝分かれしている網膜静脈は、視神経乳頭という部分で1つにまとまって網膜中心静脈となります。網膜中心静脈は、網膜中心動脈と接していて、動脈硬化が起こるとその影響を受けることがあります。血圧の急な変動や、血管自体の炎症などによって静脈の根元が閉塞することで起こるのが、網膜中心静脈閉塞症です。根元の静脈が詰まるため、その影響は網膜全体に及ぶことがあり、眼底全体に出血や浮腫が広がります。網膜静脈分枝閉塞症と比較すると、症状が重く、視力が回復しないことがあります。なお、網膜静脈閉塞症の約8割以上は静脈分子閉塞症で、中心静脈の閉塞が起こる確率は低い傾向にあります。

網膜静脈中心閉塞症の原因

網膜静脈中心閉塞症の最も多い原因は高血圧で、特に年齢が高い方に多く見られますが、高血圧でなくても動脈硬化が進行することでも起こります。症状としては、網膜に出血や浮腫が現れ、視力低下、視野欠損、モノが歪んで見えるといった症状が現れます。中には無症状のまま経過することもありますが、網膜の中心にある黄斑部分に障害が及ぶと、急激な視力低下を引き起こす場合もあります。また、静脈の閉塞が広い範囲に及ぶと、数ヶ月から数年以上経過してから、硝子体出血や血管新生緑内障などの合併症を引き起こすケースもあります。これは、静脈の閉塞によって機能を果たせなくなった毛細血管の代わりに、新しい血管が生まれてくることで生じる合併症です。新しく生まれてきた血管は新生血管と呼ばれ、非常にもろく破れやすいため、硝子体内に大出血を起こす恐れがあります。また、さらに症状の重い血管新生緑内障を引き起こす場合もあります。新生血管は網膜と硝子体を癒着させるため、硝子体に網膜が引っ張られることで網膜裂孔や網膜剥離の原因ともなります。

網膜静脈中心閉塞症の主な症状

網膜静脈分枝閉塞症は、血管の詰まる部分によっても症状は違ってきます。一般的に症状の現れ方はゆっくりで、全く自覚症状がない方もいれば、視力低下や視野欠損などの症状が現れる方もいます。血管が詰まると、血液の流れが悪くなり、静脈から血液や水分が溢れ出します。溢れ出した血液は、網膜に広がって眼底出血を起こしたり、網膜内に閉じ込められて角膜浮腫を引き起こします。眼底出血を起こすと、出血が広がっている部分の視野が遮られ、部分的に見えづらいといった症状が現れます。また、角膜浮腫が起こると視力の低下が自覚症状として現れます。特に黄斑部分に出血や浮腫が起こると、極端に視力が低下します。

網膜静脈閉塞症の治療

病気の程度や見え方の状態に応じて、経過観察もしくは治療を行います。

視力低下や見え方に異常がない場合

特に視力低下や見え方に問題がない場合は、定期的に経過を観察します。網膜浮腫が黄斑に及ぶと突然の視力低下を自覚することがありますので、異常を感じた場合は速やかに眼科を受診することが大切です。また、適切な時期に適切な治療を行うためには、検査設備の整った眼科にて定期的に経過観察をしていくことが重要です。

視力低下や見え方に異常が生じた場合

・薬による治療
静脈閉塞が起きた急性期(血管が詰まった直後)には、閉塞した血管の血流を改善するための処置を行います。血管に詰まった血栓を溶解する薬や、網膜のむくみや出血を改善する薬を使用した治療を行います。病気の初期段階で症状が軽度の場合には、この治療だけで改善する場合もあります。この治療は、完全に閉塞した静脈を開通させることは難しいのですが、まだ完全に閉塞していない場合は効果が期待できます。また、必要な場合はレーザーによる網膜光凝固術を行います。

その他の治療

黄斑浮腫の改善には、副腎皮質ステロイドホルモン剤の注射でも効果が得られるとの報告があります。また、最近では硝子体手術(硝子体を切除する手術)によって黄斑浮腫が吸収されて視力の改善が見らます。

網膜静脈閉塞症の合併症

網膜静脈閉塞症の急性期には、血流の改善や、眼底出血、網膜浮腫の治療を行いますが、発症後数ヶ月~数年後の慢性期(症状が落ち着いた時期)になると、次のような合併症が起こることがありますので、合併症を予防する治療を継続することが大切です。

・硝子体出血
血管の閉塞によって毛細血管が消失すると、血管の存在しない部分(無血管野)ができます。この無血管野では新しい血管を作り出す物質(サイトカイン)が分泌され、それによって新生血管が発生します。この新生血管は硝子体(眼球の大部分を占める透明な組織)の中に伸びてくると硝子体出血という合併症を引き起こします。新生血管は血管壁がとても弱く、もろくて破れやすいため、出血しやすいという特性があります。新生血管からの出血が硝子体内に広がると、血液によって硝子体が濁り、視界が遮られてモノが見えなくなります。

<硝子体出血の治療>
新生血管の増殖を予防するには、定期的な検診がとても重要になります。検診で、新生血管が増殖しやすい無血管野、長期的な網膜浮腫を発見した場合は、レーザー光凝固術を行って新生血管を発生させないための治療を粉います。万一、硝子体出血が起こった場合は、濁った硝子体を除去して灌流液に置き換える硝子体手術を行います。

・血管新生緑内障
緑内障は、眼の中を循環している房水の流れが悪くなり、眼圧が上昇することで視神経が圧迫され、視野欠損や失明に至ることもある眼の病気です。硝子体出血の原因となる新生血管は、網膜や硝子体だけではなく眼球前方にある虹彩にも伸びてきます。虹彩にまで伸びてきた新生血管(虹彩新生血管)が、房水の出口となる隅角にも影響を及ぼすと、出口を失った房水が蓄積して、眼圧が上昇します。これによって発症した緑内障を、血管新生緑内障といい、一般的な緑内障よりも治療が困難で、失明に至る危険性が高い緑内障です。

<血管新生緑内障の治療>
新生血管の増殖を予防するには、定期的な検診で、新生血管が増殖しやすい無血管野、長期的な網膜浮腫を発見した場合は、レーザー光凝固術を行って新生血管を発生させないための治療が必要です。万一、新生血管緑内障が発症した場合は、抗VEGF薬の硝子体注射、眼圧を低下させるための点眼内服、緑内障手術を組み合わせた治療を行います。

※黄斑部に起こる病気には、網膜静脈閉塞症のほかにも、加齢黄斑変性症、病的近視、糖尿病性網膜症などがあります。初期の症状は類似していますので、眼科を受診して正しい診断を受けることが大切です。