冨田実アイクリニック銀座

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ICL手術を受ける時のレンズの選び方

ICL手術は、眼の中にレンズを挿入して近視や乱視を改善する視力回復手術になります。近年、主流になっているのは虹彩と水晶体の間にレンズを挿入する後房型レンズになりますが、この後房型レンズの中にもいくつかの種類があります。現在、日本国内で使用されているICLレンズは5種類ありますが、それぞれが持つ特徴には違いがあります。発売時期が早いレンズは、これまでの症例実績の面で優れていますが、新しく登場したICLレンズは、レンズの機能そのものが改良されており、近視や乱視を治療するだけではなく、合併症の抑制まで考えられたレンズになります。ここでは、レンズが持つ特性について紹介していきたいと思います。

ICL手術で使用するレンズの種類

ICL手術で使用されるレンズには種類があり、レンズを挿入する位置によって前房型レンズと後房型レンズに区分けされます。前房型は、レンズ角膜と虹彩の間にレンズを挿入するタイプで、レンズ自体は虹彩に固定されますので近づいて見るとレンズが挿入されているのが確認できます。後房型レンズは、虹彩と水晶体の間にレンズを挿入するタイプで、虹彩の後ろにレンズが隠れるので、レンズが挿入されているのが解りません。審美性の面で後房型レンズの方が優れているため、現在は後房型レンズが主流となっています。後房型レンズにも種類がありますので、ここからは後房型レンズに焦点を当てて紹介していきます。

ICLの種類

日本国内で使用されているICL(後房型レンズ)

現在、日本国内で使用されているICLレンズは5種類あります。発売時期やレンズの素材、レンズの機能、レンズのデザインなどに違いがありますので、ICL手術を検討されている方には参考にしていただきたい情報になります。特に新しく登場したICLレンズの中には、合併症の抑制機能を兼ね備えたレンズも登場していますので、手術の安全性に直接関係してくる部分でもあります。小さなレンズの中に色々な機能が組み込まれていますので、従来のレンズとはレンズが持っている性能自体が大きく異なります。まずは、日本国内で使用されているレンズの種類について見ていきましょう。

・EVO+ ICL(アメリカ製)
・プレミアムICL(イギリス製)
・アイクリルレンズ(スイス製)
・プレミアムICL Pro(イギリス製)
・プレミアムICL Pro Max(イギリス製)

EVO+ ICL(アメリカ製)

EVO+ ICL

このレンズは、一番早く発売された後房型のICLレンズで、コラーゲンとポリマーを組み合わせた「コラマー」という素材でできています。当時は、柔らかいレンズを製作できる素材がなかったため、新しく開発された「コラマー」で作られたレンズが唯一の後房型レンズでした。また、発売当初はレンズの中心に穴が開いていなかったため、レーザーで虹彩に穴をあける「虹彩切開術」が必要でしたが、2014年にレンズの中心に穴が開いたホールタイプのレンズが登場したことで、レーザーによる虹彩切開術は不要となり、患者様の負担軽減につながりました。2021年にレンズの光学部(物を見る部分)が6.1mmに拡大され、ハロー・グレアの発生を抑制する改良がなされ、今の「EVO+ ICL」として発売されています。

プレミアムICL(イギリス製)

プレミアムICL

このレンズは、新しく発売されたICLレンズで、白内障手術で使用されているレンズと同じハイブリッド・ハイドロフィリック・アクリルというハイブリッド・アクリル素材で作られています。プレミアムICLは、患者様の目の状態に合わせてオーダーするカスタムタイプのICLレンズになりますので、他の既成レンズよりも作成に時間がかかります。それでも、レンズの光学系が6.6mmまで拡大されたことで、ハロー・グレアの発生リスクを抑える効果が期待できますし、白内障や緑内障の発生リスクを抑える機能など合併症の抑制機能が追加された新時代のICLレンズになります。また、レンズの表面を独自技術で加工することで汚れが付きにくく、ICLレンズの中でも質の高い視界が得られる特性が世界的な眼科学会で報告されたこともあり、当院では手術の安全性を最も重視しているプレミアムICLを開院当初から導入しています。

アイクリルレンズ(スイス製)

アイクリルレンズ

このレンズは、新しく発売されたICLレンズで、白内障手術で使用されているレンズと同じアクリル素材で作られています。最近では、ハイブリッド・ハイドロフィリック・アクリルで作製された「プレミアムICL」も登場していますので、わざわざコラマーを使用する必要がなく、もともと実績があるアクリル素材への注目度が高くなっています。ただ、このアイクリルレンズは、光学部の直径が5.5mmしかないため、ICLレンズの中でも光学部が小さいレンズになります。そのため、手術後にハロー・グレアが発生するリスクが高く、日本国内でも一部の眼科クリニックが使用しているだけで普及が進んでいない状況です。

プレミアムICL Pro(イギリス製)

プレミアムICL Pro

このレンズは、新しく発売されたプレミアムICLよりも光学部が大きく設計されています。光学径は6.8mmと大きく設計されていますので、瞳孔が大きい人に適したレンズになります。若い人ほど瞳孔が大きい傾向がありますが、瞳孔径が大きい人は夜間や暗い所で瞳孔がレンズよりも拡大してしまう可能性があります。レンズよりも瞳孔の方が拡大してしまうと、レンズの周辺部から直接光が入り込んでしまい、レンズの縁に乱反射してハロー・グレアが発生しやすくなります。そのため、光学系が6.8mmに拡大されたプレミアムICL Proは、さらに合併症を抑制できるレンズとして期待されています。

プレミアムICL Pro Max(イギリス製)

プレミアムICL Pro Max

このレンズは、光学径が7.0mmと大きく設計されており、発売されているICLレンズの中でも光学部が最も大きいレンズになります。瞳孔径が大きい人は夜間や暗い所で瞳孔がレンズよりも拡大してしまう可能性があり、ハロー・グレアの発生リスクが高いとされています。また、若い人ほど瞳孔径が大きい傾向がありますので、7.0mmの光学径を持つレンズが登場したことは、ハロー・グレアのリスクを心配されている方にとっては朗報だと言えます。レンズ全体のサイズだけではなく、光学部に関しても自分の目に適したサイズのレンズで手術を受けることができますので、よりカスタム性を持つICL手術を受けることができるようになりました。

ICL手術の安全性について

ICL手術で使用するレンズにも多くの種類があることを紹介しましたが、どのレンズを選べばいいのかが最も気になるところだと思います。当院では、視力の改善が一番の目的となりますが、手術の安全性と合併症の抑制を兼ね備えたレンズを推奨しています。目の手術という医療行為である以上は、素材の珍しさや著名人を起用した宣伝活動よりも大切なことがありますので、ここでは、当院が採用した「プレミアムICL」が持っている機能について紹介したいと思います。


<レンズの光学系>
レンズの光学系

レンズの光学部は物を見る部分になります。この光学部の直径が光学径になりますが、光学部が小さいと、夜間や暗い所で瞳孔が開いた時に、レンズよりも瞳孔の方が大きくなってしまう可能性があります。レンズよりも瞳孔が大きくなると、レンズの周辺部から直接光が入り込みますので、レンズの縁に反射してハロー・グレアの原因となります。手術に向けた適応検査では、暗所瞳孔径(暗い所での瞳孔径)を測定しますので、その測定値をもとに適したレンズを選択することが重要です。

・プレミアムICL Pro Max(光学径:7.0mm)
・プレミアムICL Pro(光学径:6.8mm)
・プレミアムICL(光学径:6.6mm)
・EVO+ ICL(光学径:6.1mm)
・アイクリルレンズ(光学径:5.5mm)

<レンズのサイズ>

ICL手術で使用するレンズにはサイズがあり、目の大きさに適したサイズで手術を受けることが大切です。レンズのサイズが合わないと、手術後に目の中で傾いてしまうリスクや回転してしまうリスクが高くなります。当然、視力が低下する原因にもなりますし、乱視用のレンズであれば乱視軸が大きくズレてしまうことになります。このため、レンズのサイズバリエーションがしっかり揃ったレンズを選択することがポイントになります。ただ、既成のレンズはサイズが極端に限定されてしまうので、オーダータイプのレンズを比べると一目瞭然です。サイズのバリエーションが少ないことは、患者様にとってデメリットでもありますので、自分に適したサイズのレンズで手術を受けることが大切です。

・プレミアムICL Pro Max(13サイズ)
・プレミアムICL Pro(13サイズ)
・プレミアムICL(13サイズ)
・EVO+ ICL(4サイズ)
・アイクリルレンズ(3サイズ)

<レンズの素材>

ICL手術で使用するレンズには種類がありますが、使用されている素材は大きく分けて2種類の素材が使用されています。一番早く発売されたEVO+ ICLはコラーゲンとポリマーを組み合わせたコラマーという素材で作られていますが、他のレンズはハイブリッド・ハイドロフィリック・アクリルというハイブリッド素材で作られています。アクリル素材は白内障手術で使用されてきましたので、眼内手術の実績からみるとアクリル素材が99.99%、コラマー素材は0.01%にも満たないレベルです。このハイブリッド・アクリル素材が開発されたことで、コラマーを使用しなくても柔らかいレンズの作成が可能となり、海外では新しいICLレンズの開発が進み、ICL手術も新しい時代を迎えたと言えます。

・プレミアムICL Pro Max(ハイブリッド・ハイドロフィリック・アクリル)
・プレミアムICL Pro(ハイブリッド・ハイドロフィリック・アクリル)
・プレミアムICL(ハイブリッド・ハイドロフィリック・アクリル)
・EVO+ ICL(コラマー)
・アイクリルレンズ(ハイブリッド・ハイドロフィリック・アクリル)

<レンズと水晶体との距離>
レンズと水晶体との距離

ICL手術では、虹彩と水晶体の間にレンズを挿入します。この時に重要なのがレンズと水晶体との距離になります。新しく発売されたプレミアムICLには、他のレンズにはない「プレミアムカーブ」と呼ばれる独自のレンズデザインが採用されていますので、水晶体とレンズとの距離が確保されています。

プレミアムカーブが採用されているICLレンズ
・プレミアムICL Pro Max ・プレミアムICL Pro ・プレミアムICL

<レンズ汚れについて>

ICL手術は、目の中にレンズを挿入して視力を回復する手術になりますが、長期的に目の中に挿入されていると「レンズが汚れてしまうのでは?」と心配される人もいるかもしれません。昔の白内障手術で使用されていたレンズは、今とレンズの製法が違うため、タンパク質の汚れが付着するという課題がありましたが、ICL手術で使用されるレンズは汚れが付きにくく、長期的にクリアな視界を維持することができます。また、プレミアムICLには「エクセレント・クリアサーフェイス」という加工が施されており、どのレンズよりもクリアな視界が得られるということが世界的な眼科学会でも報告されています。

レンズ表面にエクセレント・クリアサーフェイスが加工されているICLレンズ
・プレミアムICL Pro Max ・プレミアムICL Pro ・プレミアムICL

<乱視用レンズの挿入>
乱視用レンズの挿入

ICL手術は、乱視用のレンズを使用すれば、乱視の改善も可能です。従来のICL手術では、乱視軸に合わせて最大で20度までレンズを傾けて挿入していましたが、プレミアムICLは、レンズの光学部に乱視軸をカスタマイズできるため、乱視用レンズも水平もしくは垂直方向で挿入することができます。眼内での安定性だけではなく、目の中を循環する房水の流れにも影響を与えないというメリットがあります。

乱視軸をレンズの光学部にカスタマイズできるICLレンズ
・プレミアムICL Pro Max ・プレミアムICL Pro ・プレミアムICL

<追加されたホールデザイン>
追加されたホールデザイン

昔のレンズは穴が開いていなかったので、房水の循環経路を確保するために、手術の前には虹彩にレーザーで穴を開ける「虹彩切開術」が必要不可欠でした。現在のICL手術では、レンズの中心に穴が開いているホールタイプのレンズが使用されていますので、虹彩切開術は不要になりました。また、プレミアムICLには、センターホールだけではなく、白内障を抑制するマージンホールと緑内障を抑制するハプティクスホールが追加され、合併症を抑制する働きを担っています。

ハプティクスホールとマージンホールを持つICLレンズ
・プレミアムICL Pro Max ・プレミアムICL Pro ・プレミアムICL

<レンズの安定性>
レンズの安定性

ICL手術で使用されるレンズには、眼内でレンズを固定するためのハプティクス(支持部)がデザインされています。レンズによってハプティクス(支持部)の形状や数に違いがありますが、プレミアムICLは最も多い6つのハプティクス(支持部)を持っているため、レンズの安定性をより重視したレンズであると言えます。

ハプティクスの数
・プレミアムICL Pro Max(左右3つずつの計6つ)
・プレミアムICL Pro(左右3つずつの計6つ)
・プレミアムICL(左右3つずつの計6つ)
・EVO+ ICL(左右2つずつの計4つ)
・アイクリルレンズ(左右2つずつの計4つ)

レンズを選ぶ時のポイント

ICL手術は、非常に有効な視力回復の手段ですが、手術である以上は合併症などのリスクが必ず存在します。もちろん、合併症を起こさないように細心の注意を払って手術を行いますが、どんなに注意してもリスクをゼロにすることはできません。これは、生きている人間に対して手術をするからです。視力、乱視の有無、目の大きさ、目の中のスペースなど目の状態は個々に違います。そのため、合併症のリスクを抑制する機能は非常に重要であると考えます。レンズを選ぶ際は、安全性を最も重視することが最優先だと思いますので、自分の目の状態に適したレンズを選択することが、手術を成功に導くためのポイントになります。

まとめ

ICL手術で使用されるレンズにも多くの種類が登場していますが、新しく登場したレンズには、視力の改善だけではなく、手術後の合併症を抑制する機能が多く組み込まれています。レンズの持っている性能を知っていただくことで、著名人を起用した宣伝に惑わされることなく、レンズの持っている機能に着目してレンズを選ぶ重要性についてもご理解いただけたと思います。

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監修者

冨田実
冨田実
冨田実アイクリニック銀座院長
医療法人社団 実直会 理事長
医学博士/日本眼科学会認定眼科専門医
アメリカ眼科学会役員
温州医科大学眼科 眼科客員教授
河北省医科大学 眼科客員教授